花火の心得

日本が世界に誇れる芸術作品「花火」この文化を多くの人に「写真」を通して伝えたい。

HISTORY

江戸時代における花火の歴史

銃火器としての利用が主だった火薬は江戸時代になり、段々とその役目を終え、娯楽として使われる様になる。日本で初めて花火を見たとされる徳川家康は1613年にイギリスより国書を受け取る為に駿府国(静岡県)に赴き、そこで余興として長崎に商館を作ったジョン=セーリスにより立花火を披露された。

立花火とは今で言う手筒花火の原型である。竹の節を抜いた筒に黒色火薬を詰め、噴出する様を楽しんだそうだ。この花火によって駿府や三河地方(愛知県)には花火作りが広まり、様々な流派が擁立された。

家康による花火観覧以降、3代将軍家光の後押しもあり、大名から庶民にも広まった。当初は花火は男性が楽しむものであったが、その後、女性や子供でも楽しめる様に作られたのが玩具花火である。藁の先に黒色火薬を練りこんだ物を香炉(お香を焚く炉)に線香の様に立てて楽しんだと言われる。現在では手に持つのが当たり前の花火だが、何故、線香花火と呼ばれるのかの理由にもなる。

この線香花火は藁スボを使っている事からスボ手牡丹と呼ばれ、今でも関西を中心に楽しまれている。純正品は福岡県の筒井時正玩具花火製造所でしか作られておらず、大半が木製であり中国からの輸入である。一方、江戸では藁が入手しにくい為、和紙に包んだものに置き変わり、これを長手牡丹と呼んだ。この長手牡丹は各地に広がり三河(愛知県)や北九州(福岡県)、そして信州(長野県)で大量に作られた。何故、現在も花火が盛んな地域なのかの説明にもなる。

他にも、ねずみ花火や火車(棒付の回転花火)が流行しており、江戸幕府では火事が多発する事を原因に1648年以降、何度も江戸市中花火遊び禁止令が出されている。しかし、御触れを破ってまでも興じる者が後を絶たず、江戸の庶民には一向に効き目がなかったそうだ。

その後、子供の頃から花火作りが得意だった篠原村出身(奈良県吉野郡)の鍵屋弥兵衛が江戸に行き、玩具花火で大成功を収める。当時はなかった葦の管に丸めた火薬を入れたもので、現在のススキ花火の先駆けの様なものを販売した。1659年に東京の日本橋に鍵屋の屋号で店を構え、代々受け継がれていく事になる。

1732年になると西日本で発生した悪天候やイナゴの被害により、享保の大飢饉が起こる。江戸でも米価の高騰よる打ちこわしがあった。翌年の1733年に8代将軍吉宗は疫病や餓死者への慰霊として隅田川で水神祭を行い、余興として花火を見せたのが隅田川花火大会の原型、両国の花火である。6代目鍵屋が担当し、客寄せの為に流星(龍勢)などを数発打ち上げ、立花火を20本程見せたと言われる。

これを切っ掛けに隅田川沿いの大名の間でお抱えの火術士、砲術士に花火を打ち上げさせて楽しむ事が多くなった。彼らにより、のろし花火(音だけ花火)が考案され、それをヒントに花火師が昼間だけしかなかった花火を夜間に打ち上げる様になった。

7代目鍵屋の頃になると番頭であった清七にのれん分けし、1810年には玉屋市朗兵衛を名乗らせ、両国にて玉屋の屋号で店を構えさせた。それ以降、両国橋を挟んで上流を玉屋、下流を鍵屋が担当し両国の花火は隆盛を極めた。

玉屋市朗兵衛はのれん分けされる程、腕の良い花火師であった為、当時の浮世絵には玉屋の花火ばかりが描かれていたり、狂歌にも「橋の上、玉や玉やの声ばかりなぜに鍵やといわぬ情けなし」と詠まれている。この当時は線香花火や手筒花火の様なオレンジ一色しかなかったので、かなり形や炭の色に工夫が凝らされていた様に思う。

しかし、1843年に玉屋は失火によって店を全焼、町にも被害を出してしまう。当時、火事は重罪であった為、玉屋は江戸を追放されてしまい一代限りで家業が廃れた。現代でも花火の掛け声で「たまや~」の名前が残されている事を考えると、かなり大人気な花火師であったのは間違いないでしょう。

その後は、戦後に千葉県八千代市で元祖玉屋を営んでいた中嶋氏がのれんを正式に買い取った。直系ではないが玉屋の血縁者である。現在では、佐倉市民花火大会八千代ふるさと親子祭花火大会などを担当している。

一方の鍵屋は、宗家花火鍵屋として現代も残っており、昭和40年の12代目までは世襲的に鍵屋弥兵衛を名乗っていた。その後は天野氏に譲り、現在は15代目の天野安喜子氏により受け継がれている。花火の製造は行っていないが、打ち上げ専門業者として江東花火大会江戸川花火大会などを担当している。

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執筆者:

花火写真家として全国の良質な花火文化を記録や保存、そして拡散を目的に活動しています。年間で30~60回程度の花火撮影を行います。日本花火鑑賞士会関東支部会員。◎当サイト掲載の文章や画像の無断使用を禁止しています。
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